初めて会ったのは2009年の4月。
僕にとって初めての街、京都へ歌いに行った時の事。
上原ユカリさんを介して紹介されたその人は、
もの静かに淡々とライブの感想を聞かせてくれ、
もっとこうしたら良い、ここにこの音が入ったらもっと良い、
初対面の僕に色んな話しをしてくれたのでした。
いつも若い世代の人達に慕われて、
周りには沢山それこそ国籍を問わずそんな人達がいて、
そんな彼らと西陣まで歌を聴きに来てくれて、
終わったあとはこれからの音楽配信の形とか、
今の京都で起きている面白い動きとか、
熱く熱く語ってくれたのでした。
こうして振り返ってみるとたった四年弱しか経っていなかったのが、
不思議なくらい昔からの知り合いみたいに接してくれて、
京都に寄る時には必ず会いに行く、会いに行きたくなる、
僕にとっては深い水をたたえた静かな池のような人だった。
岸本哲さん。
カフェさらさのオーナーで、自転車屋さんナチュラルサイクルの社長。
突然の訃報は木曜日の夜。
色々やりくりして日曜日の葬儀には行こうと決めて、
「来年は彼女を連れて来ますから」
「あ、いやいや、そんな、ね?」
なんて話しをしていたその約束を守りに、
最後の機会に二人で会いに行って来ました。
ユカリさんとは面白いタイミングで一緒にいたらしく、
その何度目かの機会がトリオのツアーと重なって、
よくみんなで御飯をごちそうになりに遊びに行きました。
短い間にもあれをやろうこれもやろうと、
色んな計画を話していたのですが、
果たせないままの事の方が多かった。
この三年間で劇的に変わってきた僕の歌の事を、
とても喜んでくれたのが本当に嬉しかった。
会う度に期末試験みたいな気持ちにもなったけれど、
哲さんが紹介してくれて繋がった京都の人達のなんと多い事か。
そういう事を極自然になんの見返りも求めずに出来る素敵な人だった。
体調が悪くなり入院されたのは去年京都に行った際に
僕らが自転車屋さんに遊びに行った数日後のことらしく、
延命治療も拒み、自分の死を受け入れてその日を迎えたとのこと。
さらさ西陣の店長尾崎君に話しを聞いたら、
病院食も拒み最後までカツ丼を食べていたそうな。
今日最後に会えたその顔は本当に安らかで満足そうに見えました。
奥様が挨拶で、
「幸せな人生を送れたことをみんなに感謝したい」
と言っていたと仰ってました。
涙がボロボロ出た。
ここ一年、
死というものについて本当に考えさせられたし、
そしてこれからの日々、
もっと実際に身につまされる事が続いて行くんだと思います。
哲さんが居なくなってから、
彼が残したものや残してくれた人間関係を、
大事にして何か新しいものを生み出して行く、
それが一番の供養じゃないかと考えています。
良い葬儀でした。
無理して会いに行って良かった。
哲さん、ありがとう。
まだまだ頑張ります。
そしてまた京都へ歌いに行きます。
見ていて下さいね。
ゆっくり休んで下さい。
合掌。