あちら側の世界での時間は真夜中。
そのとき私はいきなりにピンチな場面を向かえていた。
恐ろしい暴力組織を取りまとめる二人の幹部、
それもわりかし美人の姉妹2人組に拉致されていたのだ。
とびっきりの美人ではあるが、平気で人を殺めるような、
常識の欠片も無いとてつもなくおっかない二人組だ。
自分が捕まわれている理由はさっぱり分からない。
とにかく両側からガシッと腕を押さえられていたが、
左側に居た妹のほうは好みのタイプだったので、
切迫した状況にも関わらず、押し付けられた胸の部分に悪い気はしなかった。
彼女達は私を脅迫して私の秘密基地へと案内をさせたのだ。
重い扉を開くとそこは巨大なコンテナの中のような空間。
まだ誰にも教えていない私のとっておきの秘密基地だ。
そこには4WD用のごっついタイヤが何故か3本セットでたくさん置いてあり、
こじんまりした家なら三軒分に相当する程大量の木材の山、
壁には几帳面に並べられた拳銃と弾薬のコレクション、
そして水草が生い茂った水槽が一本置いてあった。
私は何の脈絡もないこの状況に彼女達が怒りだすのではないかと
ビクビクしていたのだが、
「すげぇな、おめぇ!すげぇじゃんか!」と、私の好みのタイプである妹の方が興奮しだしたのだった。
一体何が彼女のスイッチを押したのか?
一体ここにあるもののなにがスゴいのか?
基地の持ち主である私にもさっぱり分からないのだが、
「タイヤが3本ずつなんてよ、ありえねぇよ、
意味不明!足りてねぇもんな!」褒められている気は全くしなかったが、
張りつめた空気はいつの間にか何処かに消えていた。
もしかしてこれは状況が好転したのかもしれないと、
姉の方を振り返ると彼女は黙って私に拳銃を向けている。
やはりピンチはピンチだ。ピンチらしいが、あまり実感がない。
「それになんだよ、この材木はよ!
使い道ねぇよなぁ!とにかくすげぇ!」まるで予想外の方向に向かって興奮し続ける妹、
姉の方は拳銃が並んだ壁を見ながら相変わらず私に銃を突きつけている。
「よっし!この秘密基地によぅ、
あたいが名前をつけてやるよ!
すっげぇのをよ、つけてやるよぅ!」正直私はそんなことどうでもよかったのだが、
彼女の興奮具合に対して申し訳ない気がしたので
期待に胸膨らませるふりを精一杯してみた。
「そうだなぁ、うん、よしっ、
『倉庫』ってぇなぁどうよ?え?『倉庫』!」私はもちろん、これにはさすがの姉も絶句していた。
「『倉庫』って.....
それって、名前とかじゃないですよね?」
刺激しないように気を付けて言ってはみるが、
「な?いいよなぁ『倉庫』!
姉ちゃんもよ、良いと思うよなぁ?なぁ?」
このあり得ないような提案を押し付けて来る妹。
「っていうか、う〜ん、どうかなぁ?
普通.....すぎるんじゃ無いかなぁ?『倉庫』は」と、懸命にしかも遠回しにボツと伝えたいもどかしい雰囲気の私。
どうでもよかったはずなのに、こうなってくると幾分抵抗もしたくなる。
姉の方はいらだちのあまり今にも引き金を引きそうな雰囲気。
マズい。このままでは、マズい。
すると、とうとう妹の方が怒りだして
「おいっお前!『倉庫』の何が気にいらねぇんだよっ?」と、
私に回し蹴りを食らわそうとしたその瞬間、
目が覚めた。
こちら側の時間はまだ夜明け前だった。
ものすごく鮮明に内容を覚えていたので思わず書いてみた。
こんな訳の分からない夢を見ているようじゃ、
今ひとつ体調にも自信が持てない。
もう一度ゆっくり寝てみようと思う。
ゆっくりと、寝てみようと思う。
だいたい、なんだよ?倉庫って。